シーメンスのDX(デジタルトランスフォーメーション)ソリューションが日本企業にもたらす価値

170年以上にわたって産業界の変革を牽引してきたシーメンスが、近年、軸足を置くのが「リアルとデジタルの融合」による顧客企業の課題解決だ。日本市場においても、製造業をはじめとした企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)をトータルに支援し、競争力強化に向上に貢献している。本記事では、DXの意義から要素技術、DXを成功させるための条件まで、シーメンスのソリューションとともに解説する。

はじめに

日本の製造業の課題とDXが急務とされる理由

近年、産業界の大きなトレンドとして注目される「デジタルトランスフォーメーション(DX)」。日本でも経済産業省が2018年に「DXレポート」を公表し、その重要性を訴えているが、そもそも製造業におけるDXには、どのような意義があるのだろうか。

一口に「DX」と言っても様々な段階がある。日本の製造業でも、DXの初期段階に当たる「デジタルによる自動化」は進んでいるが、DXが真価を発揮するには、そこから一歩先に進む必要がある。デジタル化した生産ラインから得られる膨大なデータを集約・解析し、最適化や新たな価値創造へとつなげることこそ、DXの根幹と言える。

実際、海外の先進事例を見ると、製造現場だけでなく、設計・開発や販売・アフターサービスも含め、全工程におけるデータを一元管理し、高付加価値化に役立てている。その点、「縦割り」型の日本企業では、組織もシステムも個別最適に走りがちで、レガシー化した既存システムを容易に改修できず、全社的なデータ集約もままならないケースが散見される。

こうしたハードルを乗り越え、データから価値を生み出す仕組みを構築する上で、シーメンスが提供するDXソリューションが強力な武器となるはずだ。

製造業のDXを加速させる「デジタルツイン」とは?

製造業においてDXが求められる背景には、「資源の有限性」という課題がある。限られた資源を有効に活用して、より効率的なモノづくりを行うには、資源を消費しないデジタル世界において「もし入力が〇〇なら出力はどうなる?」といったシミュレーションを積み重ね、リアル世界での生産を最適化する仕組みが有効だ。

そこで、エッジサーバーやPLC、センサーなどを通じて得られた工程内のデータや、設計・開発部門のデータ、さらには受発注システムや在庫管理システムなど基幹系システムのデータを集約し、現実の生産活動をそのままデジタル世界に再現した「デジタルの双子=デジタルツイン(※)」を構築することがDXの第一歩となる。

シーメンスでは、製造業の生産活動を「工程設計」「製造」「運用」の3カテゴリに分解し、それぞれ「製造のデジタルツイン」「製品のデジタルツイン」「パフォーマンスのデジタルツイン」を構築・適用する(図1参照)。

「製造のデジタルツイン」は、多品種かつ変動的な生産に対応し、生産ラインや生産計画を最適化することで、資源や時間、要員のムダを極小化するのはもちろん、従来になかった製造工程を実現。「製品のデジタルツイン」は、試作・試運転や検証をデジタル世界でのシミュレーションで代替することで、資源ロスの極小化はもちろん、品質向上やダウンタイム短縮にも貢献。さらに、斬新な機構を備えたイノベーティブな製品開発を導くことも期待できる。「パフォーマンスのデジタルツイン」は、生産ラインや製品の稼働状況をリアルとデジタルとで比較することで、課題発見や予防保全を容易にするとともに、工程や製品にフィードバックして改善を支援する。

こうした包括的デジタルツインの構築により、データドリブン思考による継続的な改善が可能となり、製品と生産の絶え間ない価値向上を導いていけるのだ。

 

※類似の用語に「サイバーフィジカルシステム(CPS)」があり、それぞれの定義には幅があるが、大まかには同一の概念と言える。

DXの成否を左右する、垂直・水平両方向のデータの統合

デジタルツインが正しく機能するかどうかは、リアル世界の生産活動をどれだけ忠実かつ詳細に再現できるかにかかっている。言い換えれば、先述した縦割りかつレガシーな組織・システムの弊害を打破し、生産現場をはじめ社内各部署に散在する多種多様なデータを一元的に集約・管理することが、DXを成功に導く条件と言える。

シーメンスは、デジタルツインの構築にあたって、2つの方向からデータ統合を推進する。1つはPLCやセンサーなど個々の機器データレベルから、工程内のエッジサーバー、MES(製造実行システム)やERP、クラウドなど上位階層まで、OT(制御技術)とITをつなぐ「垂直方向」のデータ統合。もう1つが、製品開発から工程設計、製造、出荷、アフターフォローに至る、製品ライフサイクルを通じた「水平方向」のデータ統合だ(図2参照)。

これら両方向のデータ統合を可能にするのが、シーメンスが誇るソリューション群だ。TIA(統合オートメーション)コンセプトに基づくエンジニアリングフレームワーク「TIAポータル」や、クラウドベースのIoTオペレーション「MindSphere」、PLM(製品ライフサイクル管理)システム「Teamcenter」など、世界的な実績を持つ各種ソリューションをデータ統合のためのプラットフォームとして提供。これまでバラバラだった各階層・各工程のデータをシームレスに統合することで、一貫したデータ利活用を可能にする。

さらに、データ解析やAI、シミュレーションなどのソフトウェア、さらには新たなシステムを短時間で開発可能なローコード開発基盤もあわせて提供するなど、デジタルツインに基づく価値創造をトータルに支援できるのも、シーメンスならではの強みと言える。

DXが導くもう1つの価値、脱炭素・省資源のサステナブルなモノづくり

近年の製造業が直面する課題と言えば、効率化や高付加価値化による競争力強化に加え、脱炭素や省資源といった環境対応が挙げられる。もはや環境配慮に消極的な企業は、市場から淘汰されるほかない時代が到来していると言えよう。

デジタルツインを駆使したDXは、こうした課題へのソリューションとしても有効だ。そもそもデジタルツインには、資源を消費することなく最適な手法を導けるという強みがあり、試作や試運転などに伴うCO2排出や資源消費を徹底的に抑制できる。加えて、デジタルツインを構築するためのデータ統合により、CO2排出量や資源消費量などの全社的な把握・管理が容易になり、その削減に向けた施策の立案・実施・検証が可能になる。

とはいえ、日本の製造業は多くの原料・部品メーカーとの分業体制が主流となっており、社内のみでの対策には限界がある。例えば、近年、要求が高まっている「製品カーボンフットプリント(PCF)」は、原料調達から製造、消費、廃棄・リサイクルに至る製品ライフサイクル全体を通じたCO2排出量を把握し、見える化するものだが、これを実現するには、サプライヤー各社との連携が必要になる。

シーメンスが開発した「SiGREEN」は、製造業がサプライヤー各社から排出量データを収集し、自社データと連結するためのデータ交換プラットフォーム。DXによるカーボンニュートラルなモノづくりを実現するための大きな武器として期待されている。

最後に

日本の製造業を支援する、シーメンスの「デジタルエンタープライズ」

シーメンスの中核事業である「デジタルインダストリーズ」は、その名のとおり、製造業をはじめとした産業界のデジタル化を支援するビジネス。近年、同事業がキーワードとして掲げる「デジタルエンタープライズ」には、2つの意味が込められている。

1つは、業務プロセスが高度にデジタル化され、絶え間ない自己改善が可能となり、高い価値を生み出し続けられる企業の状態。もう1つが、企業のDXを支援するためにシーメンスが提供する、ソフトウェアとオートメーションの総合的なポートフォリオからなるソリューションである。

つまり、デジタルエンタープライズとは、シーメンスが顧客企業とともに目指す理想の姿であると同時に、その実現に寄与するソリューションの全体像でもある。すでに、シーメンスのサポートのもと、製造業をはじめ国内外多くの企業がデジタルエンタープライズへの進化を実現している。

シーメンスは今後も、データの高度活用による改善のループを通じた、効率的でサステナブルなモノづくりを実現するために、日本の製造業に対するきめ細かなサポートを提供し続けていく。

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